東京都世田谷区の保坂展人区長は11日、区議会で同性カップルが住民票の続柄欄に、異性間の事実婚世帯と同様に「夫(未申告)」などの表記を検討すると表明しました。世田谷区はこれまで、同性カップルを「親族」と表記していました。保坂区長は上川綾区議の質問に対し、「当事者の方々の実情により近い表記になるのではないかと考え、導入したい」と答弁しました。
世田谷区と渋谷区は2015年、全国に先駆けてパートナーシップ制度を導入し、全国的に広がっています。同性カップルの表記問題は、長崎県大村市が5月に男性カップルの続柄を「夫(未申告)」とした住民票を発行したのを皮切りに、鳥取県倉吉市も同様の措置を取っています。
一方、日本の厚生労働省は、雇用保険法上の移転費の支給について、(住民票上事実婚であるにもかかわらず)単身分の費用のみを認める通知を発表しました。これは同性パートナーに対する差別的な扱いであり、平等権に反するものではないかという指摘が出ています。厚生労働省の三浦靖史政務官は、「同性パートナーは(支給要件)対象に含まれる形で扱われていない」「他の制度に関する検討状況も踏まえ、必要に応じて労働政策審議会で議論した上で検討したい」と答弁しました。
雇用保険法上の受給資格者は、職務上の転居をする場合、本人と家族の交通費などの支給を受けることができるため、パートナーが法律上家族として認められるか否かで支給額が変わります。現在、事実婚カップルは支給対象ですが、同性カップルは含まれていません。
松浦慶太さんは、住民票の続柄欄に「夫(未申告)」と表記されることで、同性カップルも事実婚と同様に扱われることを期待し、区役所に続柄欄を「夫(未申告)」と表記してもらうことができるか相談しました。
これについて、松浦慶太さんは「検討していただけるということで、大きな前進だと思います。嬉しいです。大村市が道を開いてくれたことが、前向きな検討につながったと思っていますので感謝しています」と話しました。
最高裁判所は今年3月、同性パートナーも犯罪被害者等に対する支援金支給法の「事実上婚姻関係と同一の事情にあった者」に含まれると判決しました。全国の自治体で対応が進められています。同様に、雇用保険上の移転費の支給についても、同性パートナーを事実婚と区別して(差別的に)家族分の支給を認めない厚生労働省の対応は、早晩、再検討を求められるでしょう。裁判になれば、敗訴は目に見えています。住民票上でも事実婚と同一である以上、迅速に支給を認める方が賢明ではないでしょうか?